Special Interview 後編
“1日中音楽に包まれる方にとって、どのシーンでも幸せになれる最高の一杯”

 

_では、「ヒビノ×EBONY COFFEE オリジナル・コーヒー」について伺います。音楽業界で歴史が長い老舗のヒビノですがコラボのきっかけは何でしょうか?

N:ヒビノさんの社員の方で当店のお客さんがいらっしゃって、もともとコーヒーが飲めなかったそうですが、うちのコーヒーに触れるうちに飲めるようになられて。ある時「じゃあ音楽にあうコーヒーって作れるの?」とオファーいただいたのがコラボのきっかけです。


_音楽とコーヒー。一見、別のものですが、コラボを受けようと思われた理由は何でしょうか?

N:ヒビノさんが「常に最高の音楽体験を提供したい」という信念のもとでやっていらっしゃって。それに対して、私たちも「最高の1杯で幸せをお届けしたい」が信念で。
また、当店は良いブレンドを作るために高品質な素材を仕入れます。ヒビノさんも良い音を出すために音響機材やマイク、そしてオペレーターさんやエンジニアさん含めて揃え空間を作る。これら信念の部分にジャンルは違えど共感するところが多く「ぜひ一緒にやらせてください」とお話ししました。


_実際にコラボが決まって、どのようなコーヒーを作りたいと思われましたか?

N:ヒビノさんは音と映像のプロフェッショナル。五感でいえば聴覚と視覚です。人々にライフスタイルを五感で楽しんでもらいたいと思い、当店がブレンドコーヒーで味覚、嗅覚を埋めていけたらという想いで始めました。


 

_もともと音楽はお好きだったのでしょうか?

N:はい、LPとシングルあわせて2万1000枚ほど持っていてCDは6000枚くらい。全部で2万7000枚ほど収集しておりまして……


_すごく音楽がお好きなんですね! 最も好きなジャンルは何でしょか?

N:もちろんさまざま好きなものはありますが、最も好きなのはソウル、ゴスペル、ジャズなどのアメリカ黒人音楽です。音楽は人生の中で欠かせないものだと思っています。ヒビノさんのお仕事も音楽なので身近に感じています。


_では、音楽とコーヒーは中根さんにとっては密接な関係がありますね。

N:はい、好きな音楽を聴きながらコーヒーを飲むのは、安らぎでもあり日々の活力にもなり、 希望や勇気にもつながります。その時間は大切にしていますね。「良いコーヒーと良い音楽があれば幸せだなあと」(笑)。


_それでは、実際に「音楽に合うコーヒー」を作るにあたりどのような味にしようと思われましたか?

N:ヒビノさんからの依頼として、朝から夜まで音楽に包まれているような方に、どの時間帯やシーンにも寄り添うコーヒーを作ってほしいと。そのためのキーワードとしては「笑顔」、「生命の躍動」、「満ち足りた時間」といったものです。


_日常の音楽を聴くどんなシーンにも合うコーヒーというお題、難しそうですが……

N:私たちが考えたのはどのシーンでも共通するのはポジティブなイメージ。その中で、朝はテーマの生命の躍動、夜は癒しや安らぎを求めると思います。当店のコーヒーは香味の幅広さがありますので、味の入り口と出口の両方の個性を活かしながら、それぞれのシーンを表現するよう努めました。

朝の場合は第一印象の躍動感をフレーバーで表現しました。夜は安らぎなので、余韻や後味といったアフターテイストの心地よさを大切にしました。癒しの部分ではフローラルで華やかな香りも織り交ぜました。朝と昼、夜、どれにもマッチする味を1つのコーヒーで表現するため、個性的なキャラクターの香味バランスを徹底的に検証しました。

キーワードのポジティブさを共通項にして、気分が落ち込んでいるときでも、躍動している時でもお昼の活動的な時でもどれにもマッチするコーヒーといいますか。「気分を高めて幸せを感じていただきたい」という想いがヒビノさんのコーヒーには込められています。


 

_実際の味を言葉にするとどういったものでしょうか?

N:まず依頼がシティローストというバランスがとれたものです。味は、柔らかな果実味とふくよかなコク、それにフローラルな香りにほんのり甘い余韻が心地良い、透明感のあるフレーバーに仕上げました。
ジューシーさとボディ感の調和を重視した、バランスの良い香味も特徴です。


_こちらも『EBONY COFFEE』さんのブレンドの作り方であり、1年間味が変わらないって味を楽しめるのでしょうか?

N:はい、当店の他のブレンドと同様、オリジナルの香味レシピをもとに作ります。また、コラボレーション商品の場合、企業が在庫を管理して、注文が入ったらそこから送るというイメージがあるかもしれませんが、今回は最高のコーヒーを味わっていただけるように、当店から直送させていただけるようにご配慮いただきました。ご注文いただいて、焙煎した当日のとても新鮮なものを発送させていただきます。


_豆が劣化していない最高の状態のものを味わえるのですね。では、できあがってみての感想はいかがでしょうか?

N:うちのコーヒーに家族が増えたような感覚です。このヒビノさんのコーヒーはうちのラインナップにはなかったものですから。毎日必ずこれを飲んで、同じ味をキープするために何を調整していけばいいかなどを毎日考えています。


_毎日飲んで研究と調整なのですね。ちなみに、毎日飲むのは胃が荒れたりからだに悪かったりしませんか?

N:むしろその逆ですね。私は開業する前にもともと胃や胆嚢などに数点ポリープがありました。店をはじめてからはコーヒーを1日10杯ほど飲んでいるのですが、1年後に人間ドックをうけたらポリープが全部消えていました。
この店を夫婦2人ではじめる時に「死ぬ前日まで働きたい」という共通の目標があり、それは現在も変わらない想いですが、そのためにはからだに良いものを扱ったほうがいい。良質なスペシャルティコーヒーはそれにうってつけのものだと思います。
 

 

_それでは最後に、購入された方が美味しくこのオリジナルコーヒーを飲むためのコツを教えてください。

N:まず、大前提としてコーヒーを美味しいかどうかは素材の味が良いかが9割占めていると考えます。たとえば90点の香味のコーヒーは初心者の方が淹れても85点までしか下がらないかもしれませんが、30点のコーヒーを世界のトップバリスタの方がすごい技術を使って抽出したとしても……最高点は30点。つまり淹れ方で香味が多少落ちることがあっても、素材以上に美味しくなることはないんです。
なのでこのヒビノコーヒーはどんな淹れ方をしても必ず美味しいというのが大前提にあります。


_味はほぼ素材で決まるのですね。その中で初心者でもできる大切なことは何でしょうか?

N:まず、推奨するのは豆のままでご購入されること。コーヒー豆は空気に触れる面が多くなるほど酸化のスピードが早くなります。豆の状態と粉の状態の酸化速度の差は1000倍くらい違うと聞いたことがあります。
「粉は豆より半分くらい風味が落ちる?」くらいにお考えの方も多いのですが、1000倍悪くなる、健康にも悪くなるのです。香りもなくなってしまいますし、もったいないです。

今、ミルが手軽な時代。アウトドアの方がよくポータブルミルを持っていらっしゃいますが、現在では500円程度から買える時代。電動のミルでも2~3千円から。コーヒーを長く、健康的に飲みたいのであればミルを買っていただきたいです。ほんの少しの手間で、香りから楽しむことができるようになります。


_豆で購入することですね。保管方法はいかがでしょうか?

N:1つは密閉。もうひとつが冷凍です。開封していない状態だったら袋のまま冷凍して大丈夫です。また、密閉が弱い状態で豆を冷凍すると肉や魚など他の食材の香りを吸ってしまう。そうするとコーヒーから香りが飛んでしまいます。
密閉はジップロックでもよいですし、シリコン付きの保存容器などを使ってもよいです。外気に触れさせないという意味で劣化を軽減します。この保存方法で豆なら3ヶ月くらいは味が大きく劣化しません。
ちなみに、常温保存の場合、豆だったら高温多湿を避けた状態で2週間くらいは大丈夫です。


_上級者の方はそのように保管されているのですね。

N:上級者の方や消費ペースが速い方の中には、常温保存で豆の味の変化を楽しむという方もいらっしゃいます。当店では焙煎した当日のものを発送しますが、当日は焙煎の味がまだ強く出ていますので、翌日や翌々日になると多少熟成されて甘味等が増していきます。ただ、甘味が増すのと同時に酸化も進むので、その丁度良いタイミングで冷凍される方もいらっしゃいます。
でも農作物なのでワインと違って、長く熟成させると美味しくなるものでもないんですよね。 長くても2週間くらいが限度です。
ただし粉の場合は酸化による香味の劣化が早いので、それを防ぐために即冷凍するのが良いです。

あとは、ペーパーやネルでのハンドドリップを推奨しています。ただ、大切なのは豆自体の質ですから抽出の方法はそれほど重要じゃないと考えています。フレンチプレスやエスプレッソマシーン、コーヒーメーカーでもよいと思います。


_それでは、最後に購入される方にメッセージをお願いします。

N:私たちはもともとどんな職業を選んだとしても、仕事をする上で何らかの形で社会貢献したいという想いを強く抱いていました。その意味でも当店のコンセプトは、 提供したコーヒーによって、豊かな心で満たされてほしい。飲んだ方が「仕事がんばろう」とか「人に優しくしたい」と思っていただけたら。些細なことでもありますが、そのようなことの積み重ねによって社会はよくなっていくという想いがあります。「コーヒーを飲んで幸せな気分になりました」といった感謝のお声を頂きますが、それが私どもの幸せです。

 <Special Interview前編はこちら

 

『EBONY COFFEE』
2011年開業。世界に5%程度しか流通していないスペシャルティコーヒーの中でも、ハイエンドの品質の豆のみを取り扱うスペシャルティコーヒー専門店。「最高の一杯」のために、最高品質の素材(生豆)を厳選し、輸送や管理にも徹底的に配慮、日々の異なる気象条件に適したローストで、理想の香味を実現しています。コーヒーの各種セミナーや、飲食店等への卸売販売も拡大中です。

東京都世田谷区奥沢6-28-4 ワイズニール自由が丘1F
TEL:03-3702-2027
OPEN:11:00~20:00
定休日:水曜(ただし水曜が祝日の場合は営業)


Edit:Takafumi Matsushita
Photograph:Taku Amano

 

ヒビノ×EBONY COFFEE オリジナル・コーヒー

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