“STAY HOME。社会が危機的状況でも、音楽は力強く、わたしたちを勇気づけてくれた”

新型コロナウィルスによる肺炎の感染拡大リスクを高めるとして、ライブハウスは政府から休業要請を受け未曾有の窮地に立たされ、人々が密集する音楽イベントやフェスは軒並み中止に追い込まれている。さらに、日本では緊急事態宣言が出ていた春は「STAY HOME」として、音楽イベントどころか大都市をはじめ街を歩くことさえ非難の対象とされた。

この戦後最大とも言える危機のもと「音楽イベントどころじゃない」と諦めてしまうのか……いやそうじゃない。この状況下だからこそ、人々を鼓舞する音楽が必要なのだ。

そんな熱い思いのもと、趣向を凝らして行われたオンラインフェスを紹介する。
「STAY HOME」を大切にしつつ、人々に勇気と元気、安らぎを与えてくれた。
世の中が困っている危機だからこそ、勇敢に立ち上がる人たちがいるのだ。



『UCHI ROCK FESTIVALーうちロックフェスティバルー』
5/3(SUN)

コロナ禍の影響で外出できないGW期間中に「皆さんに少しでも自宅で楽しんで頂きたい」という想いのもと、京阪神エルマガジン社の月刊誌『SAVVY』と『Meets』が開催したオンラインフェス。

「雑誌の取材ができない中、GWは私たちも制作でやれることがなくて。読者のみなさんも連休は家で時間を持て余してしまうのではないか。じゃあ、今僕らに何かできることはないか……それで考えたのがこのオンラインフェスです。企画をたててから2週間、声をかけてこれだけのアーティストが賛同し、今回参加してくれました」と両雑誌の編集長、松尾氏と竹村氏のお二人。

MCは、FM802中島ヒロト氏が担当。豪華な参加アーティストが自宅やさまざまな場所で、密をさけて遠隔で演奏した映像が届けられた。

 

【Artist Name_SHINGO★西成】
トップバッターは『SHINGO★西成』。昨年秋リリースした曲「日焼けしたって俺らは黄色い」をラップ。そして「できたての詩ができたのでやってみようかと思う。フレッシュなんで」と新曲を披露。「大切な人の言葉は頭じゃなくて心で記憶しような。まあ、人間それほどアホじゃない、そう信じたい」と人情味溢れる歌が心に響く。「いつも応援してくれているみんな、つないでくれたいつも取材してくれる仲間。おおきにな。今日はみんなを元気にしたくて。コロナは世界中はじめてやから、乗り越えたらみんな仲間やと思います。今は敵を作らんと。敵は人じゃないし。みんなで乗り越えましょう」

 

【Artist Name_奇妙礼太郎】
続いて、『奇妙礼太郎』は、アコースティックギター1本での弾き語り。『ビートルズ』の「black bird」を演奏。名曲の独特のアレンジに心踊り、透き通る歌声に心休まる。そのまま流れるように次の曲「ハミングバード」に。弾き語りにぴったりの、ゆったりと思いを馳せるような感覚。3曲目はファンも多い「エロい関係」を披露した。



【Artist Name_metome,uratomoe,speedmeter.】
主催の雑誌『Meets』でお肉を食べる連載をしている、浦朋恵氏。「ここ数年おうちでこんなに長く過ごすことがなかったので戸惑っていましたが、家にあるレコードを聴き返してみたり、持っている本を読み返してみたりしていたら『あれ。家って自分が選んだ好きなものしかないな』と改めて認識しました」。自身が書いた「午後に霧」と『speedmeter.』が作った「エレファントエイジ」を演奏。民族的な雰囲気と浮遊するような音源は、真夜中をゆっくりとたゆたうリラックス音。



【Artist Name_Miyuu】
「コロナウィルスの関係で思うように、ライブが出来ない日々が続いていますが、私は家に居る時間が長いので料理に挑戦したり。また部屋の模様替えや動画を作成したりしています。明るい未来はまた必ずやってくるので今は音楽のパワーで少しでも癒しを感じてくれたらいいな」。『Miyuu』は2月にリリースしたアルバム「BLUE・S・LOWLY」から「no one」「Sing Love Song」を含む全3曲を弾き語り。フレッシュで力強い歌声に癒される。



【Artist Name_カマチュー (DENIMS)】
お次は『DENIMS』のボーカル、カマチュー 氏。ファンク、ロック、ソウルなど多ジャンルがMIXされた楽曲の『DENIMS』の音源を、フォークな雰囲気にアレンジ。ファンが大好きな「カーテンコール」、「おたがいさま」を熱唱。

 

【Artist Name_おかゆはつこい (DENIMS)】
「タイトルはまだないのですが新曲です」。スローテンポでしっとりと歌いあげる楽曲が心に刺さる。「みなさんはどういう風に自粛期間を過ごされているのでしょうか。僕は明らかに飲酒量が増えましたね。あとは筋トレしたり、ご飯は魚野菜をメインにしたり。みんな好きなようにおうち時間を楽しんでください。GWはみなさんもどこか行きたい気持ちはあるんでしょうけど今年はグッとこらえて家にいて、こういう配信などやっていると思うので楽しんでください」。しっとり、ゆったり優しい「おやすみ」を演奏。文鳥が背景で飛びギターに乗るといったオンラインだからこそ見れる微笑ましい光景も。

 

【Artist Name_竹内アンナ】
「今とても大変な時ですけれどもこうして歌う機会をもらえて、ほんまにほんまにほんまに嬉しく思います。家ではギターを弾いたり。楽曲制作をしたり、機材をいじって遊んだりして。他の時間は大好きなアニメや漫画を読みあさったりして過ごしています。今だからこそできることもたくさんあると思うのでたくさんインプットしていきたいなと。でも早くライブしたいし、みんなに直接音を届けられる日がきますようにという願いをこめて大切に歌おうと思います。みなさんとの待ち合わせまでの時間を彩れるような、そんな一曲をもってきました」。人気曲「B.M.B」を弾き語り。ギター1本でグルーブ感のあるギターに透き通る声がのり、自然と体が動きます。

 

【Artist Name_KEISHI TANAKA】
「KEISHI TANAKA」は過去に動画配信した映像を提供。こういったセットリストもオンラインフェスならでは。しっとりとしたハイクオリティーな音源に和みます。

 

【Artist Name_Sundayカミデ】
「スーパークライシス、乗り切りましょう」。中学時代、はじめて先輩とレゲエクラブに行ったときの青春ソング「93年の唄」。音楽好きの青春の甘酸っぱい体験。クラブ初体験の情景がはっきりとイメージでき「いいなあ」と思いをはせる。


【Artist Name_ jizue】
「暖かくて良い季節になってきましたが、今年はおうちで元気にお過ごしですか? 4月はほとんど家から出ていませんが、家中のものを断捨離したり友達の農家さんからおいしい野菜をとりよせたり。音楽と向き合う時間もたくさんあるような、おうち時間を過ごしています。 仲の良いレーベルメイトのバンド、NABOWAと完全リモートで「Sketch」というアルバムを制作しました。売り上げは全て関西のライブハウスやクラブに寄付されます。今、少しでも音楽シーンの役にたてればという思いで、本当に音楽がすきな仲間と楽しく作りましたのでチェックしてください」。音楽でできることをやろう!という素晴らしい想い。楽曲「grass」と「sister」をギター、ベース、キーボの3人のメンバーがリモートセッション。リラックスできるインスト。通常とは違うアレンジにファンも「新鮮!」と好評。

 

【Artist Name_NABOWA】
「全くライブができなくなったわけですが、かつてないほど大変な事態になっていますね。例年だとライブやりまくっている時期ではあるんですが、できなくなったのでさあさあどうしようとメンバーで連絡をとって会議したのですが、こういう時期しかできないことって作曲なんですよね。全員が時間があいていることってあんまりないので「曲作るしかないでしょう」ってことでかつてないほどのモチベーションとスピードで曲をたくさん作っています。作曲をするのに密に連絡をとりあうので、今は会えないんですが、次ライブをやるときには、お互いより濃密な関係になっていればいいなと。それを楽しみにして今家とスタジオを往復しています。やりたくてできないこともあるかと思いますが、逆に今しかできないこともたくさんあると思うのでぜひ何かを見つけておうちで過ごしてください」。浮遊感のあるジャムセッションは個々の技術の高さも感じ取れてライブとはまた違う発見が。

 

【Artist Name_中納良恵(EGO-WRAPPIN')】
そして最後のトリを飾るのは『EGO-WRAPPIN'』の中納良恵氏。「近頃はみなさんもおうちで過ごす時間も増えたかと思いますが、私も家でひたすらピアノ弾いて、ご飯作って。あと韓流映画にハマっています(笑)。韓流ってすごいっすね、今更ながらですが『ようできとるなー』って。楽しんでおうち時間を過ごしています」。しっとりと落とされた照明の中、ピアノの弾き語り。「大きな木の下」はスキャット感があり、体が勝手に動く。続いて「ソレイユ」「濡れない雨」を静かに力強く熱唱。「水中の光」はしっとり、神秘的。実際のライブでは体験できない、まるでご自宅におじゃまして引いてもらったような体験。


『BLOCK.FESTIVAL vol.0』
4/18(SAT)

☆Taku Takahashi (m-flo)を中心に「STAY HOME,STAY CONNECTED」のスローガンを掲げて開催するオンラインフェスが行われた。配信はPC/モバイルからLINE LIVEで視聴するもの。投げ銭システムを使い、視聴者が投げ銭することで後日、自宅にフェスTシャツが届くというもの。その売り上げは参加アーティストへの還元や未来のフェス資金などに当てられた。

参加アーティストは豪華。『Chara』、『Shinichi Osawa』、『Kan Sano、『SIRUP』、『AAAMYYY』、『TENDRE』、『☆Taku Takahashi(m-flo)』といった錚々たるメンツが揃った。

各アーティストも「STAY HOME」をやりながら、ライブを配信。初めてのオンラインライブということで配線の乱れなども時にはあるが、逆に手作り感やライブ感を感じとれ、一緒の時間を共有していることを実感。また、例えば『Chara』は自宅にて演奏。息子と一緒に『Bill Withers』の楽曲をセッションするといったサプライズな一幕も。
『BLOCK FESTIVAL』はこのvol.0を皮切りに、vol.1も開催した。


STAY HOMEでも音楽の力を実感!

ライブハウスの休業要請やフェスの中止など世の中として「人前でライブができない」状況のもと、そのピンチを新しいアイデアで乗り越えた音楽シーン。視聴者からするとやはり実際のライブを思い切り楽しみたい気持ちはありますが、オンラインフェスによってプロのミュージシャンたちの弾き語りを体験できたのも、逆に嬉しい体験かも。

大変な状況で諦めるのではなく、発想を変えて新しいことに挑戦する。
そんな前向きな気持ちに、美しさを感じます。


Text:編集部